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王さん、ありがとう

 ダイエーホークスの王貞治監督が今季限りでユニホームを脱ぎました。子どもの頃はジャイアンツの大ファンで、王選手が756号のホームラン世界記録を樹立したときもテレビにかじりついて見ていましたし、王監督が引退したときは本当に寂しい思いをしたのを覚えています。そして、引退の挨拶の前後に、スタンドの四方に深々と頭を下げていたのもとても印象に残っています。また、王選手の最後のホームラン、868本目のホームランは私の誕生日である10月12日に放たれたものでそのときのこともよく覚えています。

 ONと言われた長嶋さん、王さんに共通していると私が思うのは、人の悪口や悪いことを決して言わない、そして、ファンを心から大切にするということです。お2人がテレビで解説したり、監督として口を開いたとき、選手を悪く言ったという記憶は私にはありません。もちろん激励や叱咤はあるでしょうけど、その裏にその何十倍もの愛情が見え隠れするどころか、ありありと見えます。

 お2人にまつわる逸話は沢山あるでしょうが、私が印象に残っているのは、お2人ともまだ選手だった時代、試合中強い雨が降ってきたときのを見て言った次の言葉です。

 長嶋「これだけお客さんが来てくれているんだ。お客さんのため
    にも試合を続けるべきだ」
 王 「これだけ沢山集まったお客さんを濡らしてしまって、不快
   な思いをさせたくない。試合をやめるべきだ」

 結論は正反対なのですが、思いが一つであることをよく物語っていると思います。

 王さんの引退に際しては沢山の人がコメントを寄せていますが、愛弟子でマリナーズの城島選手のコメントでとても印象に残っているものがありました。それは、敬遠のサインが出ていてピッチャーが投げたボールが大きく外れて、城島捕手はジャンプして捕球したそうです。それでベンチを見ると監督の王さんも一緒にジャンプしていた、というのです。また、「俺たちにとっては今日の試合は140分の1だけど、一生のうちで今日しか野球を見に球場に来ない人もいるだろう。だから全力で戦うんだ」とよく言われたというのです。

 私は小学生の頃、父に連れられて横浜スタジアムに巨人―大洋戦(当時)を見に行ったことが一度だけあります。王さんが引退する前の年、たしか昭和54年だったと記憶しています。私の故郷静岡では巨人の公式戦が行われないため、巨人の試合を生で見たことはそれまで一度もありませんでした。その日は何ヶ月も前から心待ちにしていて、当時はまだ乗るのが珍しかった新幹線に乗り、心ときめきながら横浜スタジアムに向かったのを覚えています。同球場はできたばかりで人工芝が照明に照らされてとてもきれいで、野球大好き少年にはもう最高の日でした。しかしながらあいにく、その日の巨人はいわゆるローテンションの谷間で、序盤から大洋に大量点を取られ、見ていて全然面白くない試合でした。しかし最後の最後に王さんは打ってくれました、ホームランを。私は、城島選手のコメントを読んで、真っ先のその日のことを思い出していました。

 もちろんワールド・ベースボール・クラッシックのときの神懸かり的な采配も忘れることができません。それまで不振を極めていた現在カブスに所属する福留選手は準決勝、決勝に代打で起用され、準決勝の韓国戦で7回の表に貴重な先制ホームラン(決勝点)を放ち、そして決勝で9回の表にまたまた貴重な追加点を叩き出すヒットを打ったのは、ご本人の活躍もさることながら、その采配も語りぐさになっています。しかし王さんは福留選手の練習中でのスイングがそれまでと違っていることを確認し、代打で使おうと思ったのだそうです。

 日頃感情を出さないマリナーズのイチロー選手が、ホームランを世界一打ったとか、そういうことではなく、この人に恥をかかせられないと思わせる人と言うのも、外から見ているだけでも頷けるような気がします。また出場した若い選手が“世界の王”に気兼ねなくプレーできるよう、ご自身から話しかけていかれ、また、「野球を楽しもう」と声を掛けられるなど、一流選手を結束させる素晴らしい素質をお持ちなのだと思います。

 また辞任会見は一部しか見ていませんが、冒頭の数分間だけでもお人柄がよく表れていました。ご自身がユニホームを脱ぐにあたり、チームの不振を全て自分の責任とされていること、まぁこれはそういう監督は沢山いるでしょうが、やめるにあたって、球団の事務局サイドにも配慮されているのです。オーナーやオーナー代行と王さんとの間にたって調整を図った常務取締役に対して、「竹内常務が間に入って一番苦労されたと思いますが」という主旨のことを言っておられました。自らの辞任会見でそこまで人に気を配るのか、と驚きました。楽天の野村監督が「王を悪く言う人はいない」というのもよく分かります。

 いつしか巨人ファンというわけでもなくなり、野球そのものに熱中しなくなって久しいのですが、王さんの監督辞任にあたり、関係者の皆さんのコメントを読んだり聞いたりして、久々に野球を好きだった頃のことを思いだし、また、王さんのお人柄にひときわ感動した次第です。名選手、名監督ならずの通念は少なくとも王さん、野村監督には当てはまらないようです。

 王さんはもう次のお仕事に向けて張り切っておられるようです。いつまでも野球少年のようなキラキラ輝いた瞳とひたむきな姿勢をぜひ、見習いたいと思います。

-TA

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コメント

この間は、コメントに、レスを頂き有難うございました。

王監督、本当に、尊敬している方です。ホームランでは、大記録を作っていながら、少しも、おごることなく、監督としても、チームを建て直し、本当に、憧れる存在ですね。

投稿: いさむ@Calif | 2008/10/10 12:24

いさむさん、

 またまたコメントを、ありがとうございました。いさむさんも野球をご覧になるのですね。おそらく私と年も近いのではないかと拝察します。王さんは、メジャーリーガーからも尊敬されていて、日本の誇りだと思います。

 明日から会議で3日間LAです。仕事だけでトンボ帰りなので、残念ながら北カリフォルニアの方にはいけません。川上先生とお会いします。

-TA

投稿: TA | 2008/10/10 14:31

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