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国際共通語としての英語

 今日の『朝日新聞』のオピニオン覧に、立教大学教授の鳥飼久美子さんのインタビュー記事が載っていました。鳥飼さんと言えば、同時通訳者のアイコンとして、異文化コミュニケーションの大家として活躍されている方です。

 犬飼さんは学校英語について、以前は学校で英語を習えば「読み書き」は出来るようになったが、「会話中心」になった今は「読み書き」も、そして「会話」も出来なくなってしまった、と嘆いています。そして、「私に言わせれば、これまで企業人が外国に放り出されて何とか英語でやってこられたのは、読み書きの基礎力があったからなんです」と述べています。

 なるほど。私はこの意味がよく分かる気がします。毎日英語で会話をしていると、ある程度スピードには慣れるし、スムースに会話ができるようになりますが、あるポイントまで来るとそこからは全然上達しないような気がします。ところが本を読んだり、文章を書くということを続けていると、以前より英語の運用能力が上がっていることを感じることがあります。

 鳥飼さんは、コミュニケーションを重視すべきか、文法・訳読を重視すべきかという問いに対して、両方が大切で、「日本人の特性に合った、最大限の効果を出すような教育方法を皆さんで考えませんか、と言いたいですね。ある程度の基礎力を身につけたら、学校教育としては使命を果たしたと思っていいのでは。あとは本人の努力です」と述べています。

 よく聞くのは、日本人が英語が話せないのは文法、読解を重視する学校の英語教育のせいだということですが、学校の勉強だけで英語をものにしようというのはそもそも無理だと思います。他の教科だって時がたてば忘れてしまうのですから、英語だけ覚えているはずもありません。ましてや語学は使わなければ上達しないのは、当然です。

 さて、グローバル化しているといわれる現代に学ぶべき英語について、「英語はもはや米英人など母語話者だけの言葉ではありません。彼らは4億人程度ですが、インドやシンガポールのように英語が公用語の国の人たちと英語を外国語の人たちを合わせると十数億人。みなさんが英語を使う相手は後者の確率がはるかに高い。英語は米英人の基準に合わせる必要はない時代に入りました」。

 これはもちろん、場合によりけりで、英語圏で仕事をする場合には、母語の話者にとって不自然にならないような英語を話す能力が必要ですが、それをするには、ものすごい時間と労力が必要、ということです。ところが、英語でコミュニケーションを取れば良い、ということだったら、難しい言葉を知っていなくて良いし、文法的に多少変でも、通じれば良いと言うことになります。「大事なのは米英人のような発音やイディオムではなく、わかりやすさです。文法も、共通語として機能するための基本を教え、使うときには細かいことを気にせず使えばいいのです」と、犬飼さんは言います。となると、英語に対する敷居はだいぶ低くなってくると思います。

 日本語を話す人種はほとんどが日本人という立場からすると、ネイティブではない話者がネイティブより多く、話している言葉も文法的に正しくないものも少なくない、というのは奇異に感じます。逆に言うと、英語を母語にしている人は、色々な国の人が話す英語を聞かなければならないので、言葉に対する包容力が磨かれるのだと思います。

 そして鳥飼さんは次のような言葉で締めくくっていました:「国際共通語としての英語に、もう一つ重要な要素があります。それは自分らしさを出したり、自分の文化を引きずったりしてもいい、ということです。『アメリカ人はそうは言わない』と言われたら『アメリカでは言わないでしょうが、日本では言うんですよ』。それでいいんです」「日本人は日本人らしい英語を話し、相手は例えば中国人なら中国人らしい英語を話し、でも基本は守っているから英語として通じる、コミュニケーションが出来る。これが、あるべき国際共通語としての英語です」。

 このような「国際共通語としての英語」をマスターするというように目標を設定すると、出来ないことをしようとすることもなく、努力を続けられる人も増えてくると思います。ちなみに、欧米の映画やドラマを字幕なしで楽しむ、ということは、あちらの文化、生活習慣をも知らないと出来ないので、「国際共通語としての英語」がたとえ話せたとしても、必ずしもできるわけではありません。私はハワイに住んで3年目にしてようやく、映画館で映画を見て、だいたい理解出来る程度になりました。でも、皆が笑っているところで笑えなかったり、映画の種類によっては半分も分からなかったりもしました。なかなか奥が深いものだと思います。

 阿部 哲也

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